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世界地図の創り方⑤:創作世界の独自ルール

当記事は「世界地図の創り方」の第五章です。序文および目次はこちらから。

だってファンタジーだから

 さて、ここまで「現実世界の地球」を基準として、作品世界の地図をいかに創るべきか考えてきた訳ですが、最後に「ファンタジー要素」の採り入れ方についても検討しておきたいと思います。

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ユグドラシルを中心とした北欧神話の世界観。すごい構造。だって神話だから!
パブリックドメイン引用元

 「ファンタジー」の定義については、様々な意見があろうかと思いますが、一般的に「幻想的/空想的であること」や「魔法に類する現実とは異なる法則性が重要な役割を果たしていること」などが、挙げられるのではないでしょうか。では、そうした幻想的で空想的、魔法のような独自の法則性を加味するにあたって、気をつけるべきことは何でしょう?
 筆者は、「その世界観なりの筋道」にあると考えます。
 極端な話ですが、「砂漠」の隣に「大氷河」があるような世界地図を創ったとしても、そのようになる理由付けがあるのであれば、まったく問題がないと思います。たとえば、「世界には七柱の神が封じられており、それらの土地の周囲は、該当する神が司る属性の影響を強く受けている」という設定があったらどうでしょうか。ある土地は、火の神が封じられているため極度に乾燥し、灼熱の砂漠地帯となっている――そして、隣接する土地には、氷の神が封じられており極寒の大氷河が広がる――。これならば、読者も納得して物語に集中することができるでしょう。
 片や、「ファンタジーなんだから現実世界の法則は無視しても良い」というだけの理屈で、都合のいい世界を広げていったとしたらどうでしょうか。芯となるルールが存在しないだけに、その都度、創作者の都合で世界設定が決められていくことになり、長く続けば続くほどに、一貫性がなくなり矛盾で溢れかえることになるはずです。そうなってくると、読者の中には不自然さが気になって物語に集中できない人や、安っぽい世界観だと感じて読み進めることすら止めてしまう人も出てくるリスクが高まっていくでしょう。
 ファンタジー要素を作品世界の地理に当てはめる場合は、それを読者に明らかにするかどうかは別として、しっかりとしたルールを創っておき、運用しておくべきだと筆者は考えているのです。まったく矛盾のない完璧な世界を目指そうとすると、それはそれで疲れてしまいますが、最低限の心配りをすることで作品世界への没入感を高めることができるのではないでしょうか。