差替文庫

読書とゲームとぬこが好き

長女(5歳)と絵本を創った話②

物語を考えよう

主人公が決まったので、次は物語のプロット作りだ。

そこで「どんな物語にするの?」と聞いてみたところ、ひとつのアイディアを説明しはじめたものの、途中でより良いアイディアを思いついたらしく、「やっぱりこっち!」と次のように発言した。

 

「お家がなくて、ひとりぼっちのユニコーンの子どもが、

 雲の上にあるお城を見つける話はどう?」

 

発想は良い気がする。しかし、山なし落ちなし意味なしとまでは言わないが、展開に起伏が見られない。そこで殊更大げさに「うーん」と唸って見せると、長女は食いついてきた。

 

「どこがイマイチなの?」

 

そこで、下の図を描いて説明を試みた。

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おはなしをかんがえようの図

身内用に書いたものなので、字が汚いのは、ご容赦願いたい。

ともかくこの図で説明したのは、君の物語は上のようなもので「ピンチも苦労もないので、ハラハラドキドキしないのだ」ということ。

これに対して、下の図は物語の緩急、山や落ちについて説明したもので、おそらく「三幕構成」を極端にシンプルにしたようなものになっていると思う。長女に対しては、「お家がないユニコーンの子ども」という主人公が「お家を探す物語」なのであれば、ゴールラインは「お家が見つかること」だろうと説明。つまり、「お家を探す」行為に対して、ピンチや苦労を考えることでハラハラドキドキが生まれて、君の物語は、もっと面白くなるのだ、という趣旨のことを噛み砕いて教えてみた。

すると「うん、わかった!」とのお答え。

本当にわかったのだろうか、少しばかり難しすぎることを教えているのではないかと、内心、危ぶんでいたところ、まずは「苦労」について提案してくれた。

 

「じゃあ、いろんなところを旅するのはどう?

 森とか砂漠とか洞窟とか。最後に雲の上にあるお城を見つけるの」

 

いいね。でも、もっと苦労している感じがほしいと要望を出すと……

 

「んー、じゃあね、こういうのはどう?

 森とか洞窟とか探しても、お家が見つからないの。

 それで、もう駄目だーってあきらめて座っちゃう。

 それで、空を見上げると、そこにね、雲があってお城が見えるの」

 

さらに良くなった。諦めて座って空を眺めるという動作の自然さに加えて、疲れ果てた様子や絶望感も感じられる。何気に城という理想郷を見つけてしまったことで引き返せなくなるという意味においては、三幕構成における「ファースト・ターニングポイント」となり得るような展開じゃないか……。

その後も、数度のやりとりを経て、ピンチに該当する展開や、それを乗り越えるための努力、物語のカタルシスとなる要素などを考えさせていったところ、見事にプロットが完成した。

それらを整理するために、長女が書いた図が以下のとおり。

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長女のプロット図

ネタバレ対策のため、三幕構成における「セカンド・ターニングポイント」にあたる部分や、その後の展開については隠させていただくが、なかなかどうして、しっかりと理解してくれているではないか。

その後、プロットを箇条書きに書き直した上で、どこまでを1ページ(ひとつのイラスト)に収めるのかを話し合い、合計18ページになるであろうところまで作業を進めて、絵本作り初日は終わったのだった……。