差替文庫

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長女(5歳)と絵本を創った話①

創作がしたい

ここのところ長女(5歳)は、ちょっとした時間ができるたびに「なにか創りたい」という趣旨の発言する。

最初はお絵かきや折り紙で済んでいたその欲求は日増しに強まり、手製の漫画や絵本、歌、工作、秘密基地づくりと次第に複雑化し、やがてLINEスタンプTシャツのデザインへと発展していった。

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そんなある日のこと、彼女はこういった。

 

「お父ちゃん、創作がしたい」

 

聞けば、私が本業で制作に関わらせてもらった絵本『ナマズオとだれもみたことのないもの』のように、しっかりと製本した絵本を創りたいのだという。もうコピー用紙を折りたたんで、ホッチキスで留めただけの手作り絵本では満足してくれないらしい……これは大変だ。

とはいえコロナ禍で、遠くに遊びに出かけることも憚られる状況もあり、せっかく自宅で出来ることなのだからと、長女の要求に真正面から向き合うことにしてみた。

よろしい、ならば創作だ。

 

もちろん長女に物語を考えさせ、絵を描かせることはできるし、これでも私は元出版編集者なので簡単な編集作業ならできる。お金さえかければ、印刷所に依頼して製本してもらうこともできるだろう。

だが、それではありがたみも薄いというもの。ここはひとつ、自分自身で印刷費を稼いでいただこう。せっかくの機会なので、どうせなら経済の仕組みというもの、お金というものの有り難さ、創作物で対価を得ることの意味も学んでほしいのだ。

 

その結果として、なんやかんやあって絵本『ユニコーンのこどもとにじのじょおう』を創り、Kindleで電子出版してみたので、その過程を記録していこうと思う。

 

どんな絵本を創りたいの?

 さあ、創るとなったら、こちらも本気だ。

「どんな絵本を創りたいの?」

そう問うと長女は、真っ先に「ナマズオの絵本」と答えた。

父が関わる創作物を気に入ってくれるのは嬉しいのだが、ナマズオは株式会社スクウェア・エニックスの著作物であり、商用利用して良いものではない。著作権とはなにかを切々と説き、自分のオリジナルキャラクターで勝負することに納得していただいた。

その上で、どんなキャラクターがいいのかと再び問うと、少し考えてから彼女は「ユニコーンがいい」と言った。ほほう、なるほど……そうきたか。

そこでコピー用紙と鉛筆を渡して、どんなキャラクターなのか描いてごらんと伝えてみたのだが、初っ端から躓くことになる。

なかなか自分が思うように、デザインを描けなかったのだ。

 

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大いに苦戦している初期スケッチ

ネコやウサギは、これまでも何度となくお絵かきしてきたのだが、「ユニコーン=馬」は、なかなかに難しい。大人の私が描けと言われても、ちょっと苦戦しそうだ。

あまりに思い通りにいかないものだから、そのうち長女は悔しさのあまり目に涙をため……べそをかきはじめた。

これはマズい、心を落ち着かせなければ……。

ひとまず鉛筆から手を離すように言い含めつつ、コピー用紙に慌ただしく下の図を描いて見せた。いきなり鉛筆を動かすのではなく、どんなキャラクターを描きたいのか頭の中で思い描いてごらん。

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キャラクターをつくろう!

しばし考え込んだ彼女は、そのうちに「おぢづいだがら、がんばる」と鼻声で言うので、「カラダ」や「アタマ」のシルエットを大まかに円で描いてから細部に移るようにとアドバイスを送りつつ作業再開。すると少しずつ、長女なりのユニコーンが姿を現し始めた。

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形が見えてきたスケッチ

かくして、主人公キャラクターである「ユニコーンのこども」の大まかなデザインが完成した。さあ、次は物語のプロット作りだ……!